恐るべきひと

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  大きな声にならないよう、 ささやきながら威嚇してみる。 TAKUMIはじいっと あたしを見つめて── やがてだらしなく 口元を緩めて笑った。 「何ですか」 「……いや、 言われるまま咥えたのは 煙草だけだっけか、と思って」 ……殺したい。 切に。 「……セクハラで訴えてもいいですか」 「どうぞどうぞ。 俺は本当のことしか言ってない」 「過ぎたことを蒸し返すのは、 悪趣味です!」 ロビーに誰もいないことを、 一瞬目で確認してから。 革のジャケットを着ている 彼の胸元に、 買ったばかりの煙草の箱を 投げつけた。 .
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