恐るべきひと

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  思い出すと顔から火が出そうで、 とっても恥ずかしい。 ブース内で聴いたTAKUMIの声は まるで彼自身の舌や指のように、 あたしの身体のあっちこっちを 這い回っていった気がする。 ……その湿度や温度を 実際知っているだけに、 その想像は妄想でも絵空事でもない。 ぶる、と震えたあたしを、 TAKUMIだけがじっと見ていた。 ビクッと反応すると、 薄暗いブースの中で キラリと光る彼の瞳が、 ……何故だかやわらかく溶ける。 その瞬間こそ、 あたしは今日一番 泣き崩れたくなってしまった。 ……欲しい。 今すぐ、あの人のこと……欲しい。 .
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