恐るべきひと

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  ゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚ 「あ……っ!」 強引に押し込まれた空間に、 TAKUMIと同じ香りが立ち込めていた。 それだけでここは 彼のテリトリーなのだと 判ってしまって、眩暈がする。 レコーディングのあとのTAKUMIは ひとりで過ごすことが多いらしく、 さっき九鬼さんは「気をつけて」と 彼に躊躇うことなく車のキーを 差し出していた。 だから、きっとこれは彼の車なんだけど。 「た、TAKUMIさん、待って」 「待たない」 外したマスクを足下に投げ捨て、 TAKUMIはあたしのバッグを 奥に放り投げてしまう。 見た目よりもゆったりとしたシートが 思いの外心地よくて、 立ち上がることを変に躊躇った。 .
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