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「あ……っ!」
強引に押し込まれた空間に、
TAKUMIと同じ香りが立ち込めていた。
それだけでここは
彼のテリトリーなのだと
判ってしまって、眩暈がする。
レコーディングのあとのTAKUMIは
ひとりで過ごすことが多いらしく、
さっき九鬼さんは「気をつけて」と
彼に躊躇うことなく車のキーを
差し出していた。
だから、きっとこれは彼の車なんだけど。
「た、TAKUMIさん、待って」
「待たない」
外したマスクを足下に投げ捨て、
TAKUMIはあたしのバッグを
奥に放り投げてしまう。
見た目よりもゆったりとしたシートが
思いの外心地よくて、
立ち上がることを変に躊躇った。
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