恐るべきひと

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  さっきTAKUMIには、 声と視線だけで何か大事な場所を いじくられ、そして盗られた。 あたしはと言えば、 魂が抜けたように「お疲れ様でした」と フラフラ表から レコーディングスタジオを出たわけで。 非常階段の扉の隙間から 伸びてきたTAKUMIの手に引かれるまま、 駐車場まで来てしまった。 それで、この状況だ。 震えるあたしを見下ろしながら、 TAKUMIはゆっくりと屈み、 車内に身体をねじ込んでくる。 真上からのしかかるように シートの上に閉じ込められ、 TAKUMIは観察するような目で あっちこっちを見つめた。 「やめて……」 「どうして」 「この前も、お願い、しました……」 .
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