恐るべきひと

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  思い出を追いながら、 頭の片隅がチリチリと焦げていた。 イライラする前に、 一服してしまおう。 「──煙草、 やめたんじゃなかったのか」 「ひっ」 いきなり響いた低い声に、 今まさに咥えようとしていた 1本を思わず取り落としてしまう。 横からニュッと伸びてきた 黒の指抜きグローブが、 あたしのお腹の前で それを受け止めた。 ……顔なんて見なくたって判るよ、 この声は。 「……それ、差し上げますんで。 ほっといて下さい」 「やめたんじゃなかったのか」 .
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