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おれも好き。
付き合ってください。
僕は、そう言えなかった。
「大好き」
抱かれながら、彼女がそう言ってくれたあとも
僕はただうなずき、
「早苗...」
「うん」
セックスの時は気分が高まり、恥ずかしさが抜け、名前で呼ぶ僕に
真剣なまなざしで返事をし、
官能的な表情で悶え続ける彼女を
上から見ていた。
このまま付き合えたらどんなにいいだろうか。
僕は卑怯者だ。
これじゃ、ヨシトと一緒の事を彼女にしてるじゃないか。
いや、僕の方が残酷だ。
身体だけの関係。好きだけど、付き合わない。
悲しむ彼女を助けたくて、何とかしたくて、
そんな正義のヒーロー気取りは、
気付くと、世界一不誠実な男に変身していた。
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