第1幕 大晦日

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 AM0時17分、 1秒の狂いもなく、 今年も判で押したように着信音が鳴り響いた。 「おめでとう月子!」 「今年も病気にだけは気をつけてね」 「それと、 ……いいや! 今度ね」 「母さんも若くないのだから無理しないでよ」 「お盆には帰るから」と、 岩手の片田舎で暮らす母親とのごくごく簡単な会話が、 彼岸法要の儀式のように短時間で終わった。 月子は39年前、 1月1日午前0時17分、 この瞬間、 母親の胎内から産みだされた。 〝おめでとう月子!〟と言う母親の文言には、 年始の挨拶と月子の誕生日の祝いを、 あわよくば一度で済まそうという魂胆が丸見えだった。 でも、 この年齢になれば、 このような恒例行事もすごく嬉しい。
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