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「お母さん、
ありがとう!」
「遅くまでごめんね。
もう寝ていいよ」と、
月子は閉ざした携帯電話を握り締めたまま優しく話しかけた。
そして、
少し前屈みの母親のエプロン姿が頭に浮かび、
程なく涙が溢れだした。
「ごめんね!」
「親不孝の娘で! ごめんなさい!」と、
蚊の鳴くような弱々しい声が、
月子の口元から零れた。
月子は、
東京下町の路地裏に立ち並ぶ賃貸アパートの301号室でOLライフを満喫していた。
少しは優雅な独身貴族だと自負もしていた。
しかし、
世間様は〝寂しいおりとりさま〟と嘲笑う。
親戚筋は〝行かず後家〟と中傷する。
社内では〝お局様〟と揶揄されていた。
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