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もう、
わたくしはただ飾られているだけの人形のような姫宮ではない。
夫を騙して顔色一つ変えない、
悪女なのだ。
そう思うと、
ひとりでに笑みが込み上げてくる。
源氏の君の、
あの冷たい石のような瞳を思い出してみても、
もう怖いとは感じなかった。
以前はあの眼を思うだけで、
彼の優しげで、
そのくせ感情の抑揚がまったくない声を思い出すだけで、
背筋が凍るほど怖ろしかったのに。
みんな、
あなたのせいなのだわ、
柏木。
あなたの恋情が、
その輝く瞳が、
わたくしをこうまで変えたのよ。
わたくしは生まれて初めての恋に、
朝も夜も、
陶然と酔いしれていた。
わたくしも柏木も、
この恋のために生まれてきたのだと、
本気でそう思っていた。
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