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夜明け前に柏木が帰っていく時の、
半身を引き裂かれるような悲しみさえ、
わたくしを恍惚とさせる。
こんなにも深く激しく人を愛することができるなんて。
朧月夜はこの悦びを心ゆくまでむさぼり尽くし、
そして満足したから、
仏の道へと進んだのだろう。
でもわたくしは、
まだ足りない。
生まれて初めて知ったこの歓喜に、
わたくしはのめりこんでいた。
柏木が怖いものなどないと言えば、
わたくしも同じ気持ちになってしまう。
この逢瀬を続けるためなら、
もう何も怖いものはない。
源氏の君でさえも。
「源氏の君はまだ二条院に?」
柏木がそんなことを訊ねることもある。
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