第1章

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 かつて源氏の君の愛人が、 自分でも知らないうちに生き霊となり、 ついに正妻を憑り殺してしまったように、 わたくしもまた、 柏木との不義の恋を続けるために、 無意識のうちに紫の上に憑りついて、 彼女を弱らせているのではないか、 と。  たとえそうであっても、 願わずにいられない。 柏木と抱き合うこの時間が、 一日でも長く続くようにと。  この恋がわたくしを変える。 罪を犯しても恥じ入ることもなく、 他人の病を喜ぶような怖ろしい女に。  そして、 源氏の君をも目の前で平然と欺ける、 狡く、 ふてぶてしい女に。  わたくしはそんな自分の変化すら、 驚きながらも心のどこかでひどく楽しんでいた。
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