第1章

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「ああ、 もう! なにをそんなに嬉しそうになさってるんです! 紗沙さまは、 夫に見捨てられて、 夜離れの続く侘びしい妻ですのよ! そのようににこやかにしてらしたら、 誰だっておかしいと思うじゃありませんか。 あの意地悪婆さんたちに見られたら、 いったい何を言われるか――!」  わたくしはつい、 吹き出して笑ってしまった。  だって、 後宮育ちで何事にも疎く気の利かないわたくしのために、 源氏の君が特に選んだ教育係の女房たちを、 「あの意地悪婆さん」だなんて。 たしかに彼女たちは、 ぼつぼつ白髪が目立ち始めたおばさんばかりだけれど。
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