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その時、
わたくしの足元で小さく、
にゃあ……と声がした。
「あらお前、
どうしたの」
それは、
小さな白い唐猫。
もう一匹、
昔から六条院にいる大きな猫に追いかけられて、
わたくしの足元に逃げ込んだらしい。
飼い猫である印に、
首には長い紐を結んである。
わたくしは不意に思いついた。
黙って猫の紐をつかみ、
御簾の上げ下ろしに使う紐に絡ませる。
そして唐猫を抱き上げると、
大きな意地悪猫のほうへぱっと離した。
「そら、
お行き!」
唐猫は大きな猫から逃げようと、
外へ向かって勢い良く走り出した。
紐が引っ張られる。
音もなく、
御簾が巻き上がった。
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