第1章

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 唐猫はすっかり紐に絡まってしまい、 御簾の横でもがいている。  でも、 女房たちはまだ誰も気づかない。 庭の若者たちも蹴鞠に夢中で、 室内を振り返る者はいない。  まるで時間が停まってしまったように思えた。  わたくしは、 身動きひとつできなかった。  まばたきするのさえ、 惜しかった。  全身がまるで川底の砂みたいに砕け散り、 柏木のほうへ一気に押し流されていくみたい。
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