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澱んだような空気に、
この六条院に来てから飼い始めた唐猫もなんだか機嫌が悪く、
しょうのないいたずらばかりしていた。
「東北の町に、
夕霧の若様がお友達を大勢連れておいでなんですって。
ほら、
あちらには広い馬場などもございますから」
東北の町は、
別名夏の御殿。
女主人は花散里の君。
この人は、
先々帝桐壺院に仕えていた麗景殿(れいけいでん)女御の妹君で、
源氏の君との関係は紫の上よりも古いという。
身分は高貴だが裕福な後見もなく、
容貌も他の女君にやや見劣りするものの、
優しくおっとりとした人柄が愛されて、
源氏の君のただ一人の息子、
夕霧中納言の母代わりをつとめているそうだ。
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