第1章

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 それでも室内を几帳で囲ってしまわないのは、 やはり蒸し暑いのと、 そんなものを立ててしまっては、 庭の様子を眺めるのに邪魔だからだろう。  わたくしもそれを咎めなかった。  女房たちみたいに御簾のすぐそばまで寄って、 衣の端を外へ出し、 男たちの歓心を集めるような真似はできないものの、 いつも座っている薄縁(うすべり)を離れ、 少しずつ御簾のそばに寄って庭の様子を眺める。  御簾を降ろすと、 外からはほとんどこちらの様子は見えなくなる。 けれど内側からは、 外が透けて見えるのだ。  夕霧中納言を中心に、 頭の弁(とうのべん)、 兵衛の佐(ひょうえのすけ)など、 内裏でも指折りの若い公達たちが、 かけ声もすこやかに鞠を桜の空へ蹴り上げる。
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