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「おーう!」
「あーりゃっ!」
小さな布製の鞠が高く中空へ舞い上がるたび、
庭のあちこちから高い歓声があがった。
渡殿には源氏の君や、
蛍兵部卿宮の姿もあった。
鞠を追う若者たちを眺め、
扇で指し示したり、
なにか小声でささやき交わしたりしている。
そして――。
「柏木……!」
胸の奥で、
心臓がどくん!と大きくひとつ、
跳ね上がった。
散り急ぐ桜のもと、
柏木が立っていた。
桜吹雪の中、
庭を走り回る若公達。
その姿を、
女房たちが御簾の陰から透かし見る。
声を抑えた歓声やため息が、
部屋のあちこちから漏れた。
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