第1章

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 高貴な女が立って歩くのは、 ひどくはしたないこととされている。 けれどわたくしは立ち上がり、 精一杯背伸びして、 御簾の向こうを眺めずにいられなかった。  女房たちも蹴鞠の見物に夢中だ。 誰もわたくしの行儀の悪さを咎める者はいなかった。  やがて柏木は、 蹴鞠の輪からすいと抜け出した。  いかにも、 息が切れた、 一休み――というような顔をして、 母屋の階に腰を下ろす。
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