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弁の君は、
源氏の君に死ぬほど怯えているのだろう。
無理もないとは思うけれど。
源氏の君はわたくしたちの密通をとうの昔に知っていたのだと説明しても、
弁の君には理解できないだろう。
わたくしだっていまだに、
源氏の君がなにを考えているのか、
まるでわからないのだから。
忙しい合間を縫ってわたくしのもとを訪れた時にも、
源氏の君はなにも言わなかった。
以前とまったく変わらない笑顔、
悠然とした様子で、
わたくしを見ているだけだ。
「今はどうしてもあちらに手をとられてしまうので、
あなたには淋しい想いをさせていますね」
いかにも人並みの夫婦のような顔をして、
そんなことを言い、
わたくしの手を取る。
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