第1章

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 わたくしを殺すことだって、 源氏の君には容易いはずだ。 女というものはみな、 家の奥深くに閉じこめられている。 そこでなにが起きようとも、 そう簡単に外部へ知られるものではない。 わたくしが明日、 突然命を落としたとしても、 物の怪に憑かれたとか急の病とか、 理由はいくらでもつけられる。 源氏の君がそうなのだと断言すれば、 それを疑う者はこの国にはいないのだから。  彼はなぜ、 そうしないのだろう。 自分を裏切った妻など、 生かしておく価値はないだろうに。  それとも、 源氏の君にとってわたくしはまだ、 利用価値があるのだろうか。
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