第1章

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 そう考えて、 わたくしはふと思い当たった。  わたくしはこの六条院で、 もっとも若い女君だ。  ほかの女君たちはすでに三〇才を越えている。 その年齢で身ごもった例もないわけではないけれど、 ふつうはもう出産は無理と思われる年頃だ。  源氏の君ももう四〇才を過ぎているけれど、 桐壺院が冷泉帝を授かったのも同じ歳の頃と聞いている。 男の四〇と女の四〇は、 違うのだ。  彼は、 わたくしに自分の子を産ませようと思っているのかもしれない。 彼の権力をより強固なものにするために、 子供、 特に娘は、 一人でも多いほうがいいに違いない。
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