第1章

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 明石女御の里邸は、 六条院春の御殿の西の対。 彼女は、 紫の上の養女となっているからだ。  女御の生みの母は冬の御殿に暮らす明石の君だが、 彼女は、 家系をたどれば大納言、 大臣にも行き着くとはいえ、 その身分は地方受領(ずりょう)の娘にすぎない。 母の身分が低いと宮中で軽んじられてしまうため、 明石女御は、 宮家の血をひく紫の上の養女として入内したのだ。  紫の上は母親として、 女御の出産のすべてを取り仕切らねばならない。  産屋となる西の対は浄めのために、 部屋のしつらいも女房たちの装束も、 すべて白一色に統一された。 廂の間には護摩壇が設けられ、 都でも指折りの高僧たちが安産祈願のために招かれる。
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