第1章

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 そして源氏の君もまた、 この出産の準備にかかりきりとなった。  明石女御が産む子供には、 源氏の君の、 ひいては皇統源氏すべての命運が託されている。 彼女が男子を出産し、 その男子が帝冠を戴いた時にこそ、 皇統源氏の権力図は完成するのだ。 かつてわたくしのお父さまが即位し、 その母である弘徽殿母后、 外祖父の右大臣とで三位一体の権力構図を完成させたように。  西の対、 東の対はざわざわとして人の出入りも多く、 夜通し灯りが絶えることはなかった。  安産を祈願する読経が間断なく響き渡り、 宮中からの使者や源氏の君のご機嫌をうかがう公卿たちがひっきりなしに六条院の門扉を叩く。
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