第1章

7/105
前へ
/105ページ
次へ
「お若いですけど、 内裏では人一倍苦労されていらしたからでしょうね。 なにせ、 六位の文章生から這い上がった方ですもの。 親の七光りでいきなり高位高官に着かれた方々とは、 肝の座り方が違いますんでしょ」  とにかく、 彼や源氏の君が六条院に居るあいだは、 わたくしはおとなしくしているしかない。  わたくしに仕える女房たちですら、 人手が足りないと、 東や西の対へ駆り出されることすらある。  源氏の君は時々、 思い出したようにわたくしの居る母屋へ顔を出す。 ほんのご機嫌伺いで、 一刻ととどまることはないのだが。 それでもいつも前触れもなく、 突然やって来るものだから、 こちらはいつ源氏の君が来るかと気を抜くことができない。
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加