9人が本棚に入れています
本棚に追加
わたくしは小少将の手紙になんと返事をやればよいか、
考えつかなかった。
だって真実はまだ、
わたくしにもつかみ切れていないのだから。
そしてわたくしや小侍従が返事を書けば、
それはきっと夕霧に見つかり、
取り上げられてしまうだろう。
わたくしたちだけではなく、
小少将やお姉さままで危険にさらしてしまう可能性がある。
今はまだ、
目立つことはできない。
「夕霧さまは、
病床の柏木さまとお文のやりとりをなさったと、
その手紙を主上にもお目にかけたそうです。
宮中で働く女房たちが、
うわさしていましたわ」
「その文も全部、
夕霧が書いているのね。
お兄さま――主上は、
同じ人間の筆跡(て)だって気がつかれないのかしら」
自分で言って、
わたくしは自分で小さく首を横に振った。
異母兄(あに)はそこまで鋭い人間ではない。
英明で観察眼に優れた冷泉さまならともかく。
最初のコメントを投稿しよう!