第1章

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「太政大臣家の家人や女房たちも、 真実を知る者はほとんどいないようです。 柏木さまは一条のお屋敷で闘病中だと思い込んでいるみたいですの。 弁の君と何度か手紙をやりとりしました。 夕霧さまの北の方、 雲居雁さまも、 お兄君はまだ生きておいでだと信じておられますし」  そうやって、 六条院でも、 太政大臣家でも、 柏木がまだ病床で生きているかのように取り繕い、 もっともらしいうわさを流す。 「柏木さまのご容態ははかばかしくないようですわ。 回復が遅れたため、 内裏にもとうとう辞職願いを提出されたとか」 「主上はそれをお引き留めあそばして、 反対に大納言の位を贈られたそうですの」  真実はすべて隠された。
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