第1章

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 そしてようやく葬儀が行われ、 大納言となった柏木の遺体は荼毘に付された。  ……その亡骸も、 今となっては本物の柏木だったかどうかわからない。 もしかしたら柏木の亡骸は、 先にひっそりと火葬され、 埋葬されていたのかもしれない。  頼みにしていた長男に先立たれた太政大臣は、 その嘆きと心労に一気に老いやつれ、 かつての面影もなくなっていたという。 そして間もなく、 内裏でのすべての職を辞し、 政治の表舞台から完全に引退した。  廟堂に残ったのは頭の弁(とうのべん)、 兵衛の佐(ひょうえのすけ)など、 柏木のまだ若く未熟な弟たち。
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