第1章

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 年令は夕霧とさほど変わらないものの、 親の七光りで何の苦労も知らずに出世してきた彼らは、 早くから宮中の荒波に揉まれ、 実力で昇進を掴んだ夕霧とは、 肩を並べるべくもない。 上位にある髭黒大臣は夕霧と玉鬘にうまく手綱を握られ、 皇統源氏の言いなりだ。 夕霧と対抗できるのは柏木だけだったのだ。  早くも内裏は次代の勢力地図が定まってしまったと、 そんなうわさが流れていた。  間違いない。  皇統源氏は勝利をおさめ、 藤原一門は敗北したのだ。  勝者の権限として、 この犯罪は完全に覆い隠された。  ――けれど、 なぜ?  勝者と敗者の図はわかる。  でも、 なぜ柏木は殺されなければならなかったの!?  なぜ。
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