第1章

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 誰が、 ではない。 それはもう、 疑いようがない。  疑問はただひとつ。 「なぜ」。  わたくしと密通したことを裁かれたのか。  ――そんなはずはない。  たしかに他人の妻を盗むことは罪だけれど、 源氏の君にそれを裁く資格はない。 帝への入内が決まっていた朧月夜と密通し、 彼女が尚侍として出仕したあとも、 ずるずると禁じられた関係を続けていた彼に。  第一、 不義を罰することが目的なら、 なんで試楽の宴などという派手な舞台を選ぶ必要があったの。 もっと目立たぬよう、 ひっそりと柏木の命を奪うこともできたはずなのに。 そしていまだに、 わたくしになんの罰も与えられていないのは、 何故?  では、 廟堂での争いの結果?  柏木は手紙に書いていた、 必ず源氏の君に勝ってみせる、 と。
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