第1章

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 内裏での闘いに決着がついても、 勝者は敗者の生命までは奪わない。 官位を剥奪し、 遠い辺境の地へ追いやるだけ。 それが今のやり方なのに。  もしも生命まで奪ってしまったら、 死した敗者の魂が怨霊となり、 勝者に祟ってしまうから。 人の身を苦しめる病も不幸も、 都を襲う天変地異さえ、 すべては怨霊のしわざだとされる。  源氏の君は、 柏木の怨霊も恐れはしないということ?   いいえ……もしかしたら。  ふと、 かつて柏木が言っていたことが思い出された。  源氏の君が須磨へ落ちるころ、 当時まだ東宮だった冷泉さまについて、 妙なうわさが流れたと――。
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