第1章

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 わたくしは顔をあげた。  もしかして、 そのせいだったの?  そう考えると、 すべてのことがつじつまがあってくるような気がする。  柏木が源氏の君を追いつめようとしていた、 切り札。 それが、 その冷泉さまにまつわる秘密だとしたら。  冷泉さまが突然退位されたのも、 それなら納得がいく。 東宮に譲位しなければ秘密を暴露すると、 柏木が脅したのかもしれない。  いったい、 どんな秘密なの。  柏木がそれを知ってしまったがために、 殺されたのだとしたら。  わたくしも、 それを知らなくてはならない。 「女三の宮さま。 お食事でございます」  中年の女房が女童を従えて、 食事を運んできた。
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