第1章

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 次々にわたくしの前へ並べられる、 贅を尽くした料理。  けれどわたくしは、 箸もとらなかった。 「いりません。 食べたくないの。 下げてちょうだい」 「紗沙さま……」  そばに控える小侍従が、 心配そうにわたくしを見る。  けれど無理に食事を勧めようとはしない。  小侍従も知っている。 なぜ、 わたくしが食事を拒むか。  ――都も場末の市まで行けば、 怪しげな祈祷師や薬師も大勢いる。 金次第で、 どれほど危険な呪符や薬でも、 用意してくれる連中が。  堕胎の薬だって、 簡単に手に入れられるのだ。  六条院で出されるものを、 うかつに口にするわけにはいかない。
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