第1章

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「どうして、 欲しいと望んだ女(ひと)には子供が恵まれず、 望んでもいない人の腹に子供ができるのだろうか」  と、 言ったらしい。  おそらくそれが、 彼の本心だろう。  望まない子供の誕生を、 源氏の君がただ指をくわえて待つだろうか。  西の対の女房たちがどこまで知っているのか、 源氏の君から何を命じられているか、 わからない。  けれど周囲の人間たちすべてが、 わたくしを見張っているように思える。 小侍従以外の者すべてに疑いの目を向けざるを得ないのだ。  負けるものか。  この子を無事に出産するためなら、 わたくしは何だってできる。
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