第1章

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 じりじりしながら待ち続けること、 半日。  日が暮れる頃になってようやく、 小侍従は戻ってきた。 「ああ、 気分が悪い。 お願い、 わたくしを一人にしてちょうだい」  具合が悪いふりをして、 女房たちを追い払う。 「大丈夫でございますか、 紗沙さま。 気をしっかりお持ちあそばして!」  小侍従はかいがいしくわたくしの世話をするふりをしながら、 御帳台のそばへ近寄った。  そして。 「うかがってまいりました」  声をひそめ、 小侍従はささやいた。  周囲を気遣い、 少しでも物音が聞こえると、 お互いすぐに口を閉ざす。 そんなことを神経質に続けながら、 わたくしは小侍従の報告を聞いた。
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