第1章

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「なんで……そんなことを――」 「わかりません」  小侍従は首を横に振った。 「病が感染る(うつる)といけないからと、 主上からのお見舞いの使者もほとんど門前払い。 一条のお屋敷に出入りできるのは、 今は夕霧さまお一人とか。 夕霧さまはほとんど毎日のように一条を訪れておられますわ」  淡々と報告する小侍従の横顔は、 まるで別人のように暗く、 やつれていた。  きっとわたくしも同じだろう。 小侍従は時折り、 ひどく心配そうにわたくしを見る。 「紗沙さま。 これをお読みくださいませ」  そっと一通の文を差し出す。 何人もの手を経て、 ようやく届けられたのか、 薄汚れてくしゃくしゃになってしまった手紙。
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