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「なんで……そんなことを――」
「わかりません」
小侍従は首を横に振った。
「病が感染る(うつる)といけないからと、
主上からのお見舞いの使者もほとんど門前払い。
一条のお屋敷に出入りできるのは、
今は夕霧さまお一人とか。
夕霧さまはほとんど毎日のように一条を訪れておられますわ」
淡々と報告する小侍従の横顔は、
まるで別人のように暗く、
やつれていた。
きっとわたくしも同じだろう。
小侍従は時折り、
ひどく心配そうにわたくしを見る。
「紗沙さま。
これをお読みくださいませ」
そっと一通の文を差し出す。
何人もの手を経て、
ようやく届けられたのか、
薄汚れてくしゃくしゃになってしまった手紙。
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