第1章

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 お気の毒に、 一条御息所さまはご心痛ですっかり体調をくずされて、 寝込んでしまわれました。 夕霧大将が陰陽寮からお呼びよせになった薬師(くすし)や咒禁師は、 柏木の殿を診察しているのではありません。 御息所さまのお手当をしているのです。  これはどういうことなのですか? なぜ柏木の殿は、 あのような変わり果てたお姿で六条院からお戻りになられたのでしょう。 女三の宮さまならば、 くわしいご事情をご存知でらっしゃるのではないでしょうか。  夕霧大将はなにも教えてはくださいません。 ただわたしたちに固く口止めをして、 ご自分はさも柏木の殿がまだご存命であるかのように振る舞っていらっしゃいます。 見舞いと称して一条のお屋敷に足繁くお通いになり、 わたしどもが外部の人間と接触することのないよう、 見張っておられるのです。
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