第1章

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 夕霧大将、 そして源氏の君は、 なにがなんでも柏木の殿が六条院以外の場所で、 試楽の夜よりあとに亡くなられたことになさりたいのでしょう。 このような不自然な亡くなり方をお知りになれば、 太政大臣さまは必ず、 愛するご長男の死の謎を暴こうとなさるでしょうから。  世間をあざむくための秘密を押しつけるには、 わたしどものような人手の少ない、 後ろ盾のない女所帯がもっとも手頃だと、 源氏の君と夕霧大将はお考えになられたのでしょう。  まさにお二人の思惑どおりです。 御息所さまは床につかれたまま、 女二の宮さまも声もお出しになれないほど怯えきっていらっしゃいます。 あまりにもお気の毒で、 おそばにお仕えするわたしどもですら、 もう見ていることができません。
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