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またソファに戻っていく後ろ姿。
その向こうの景色が彼を通して見えてしまう。
一体どうしてこんな状況になったんだろうか。
そもそも秀さんは、何者なんだろう。
突然現れた彼は、抜群の存在感を見せつけるのに。
存在そのものは、実体のない、透けた体で。
さっきも、彼の透けた体の中に入ってしまった自分の腕に、どきっとした。
こんなことは、当たり前だけど初めてで。
なんとかして彼の何かを見つけられればと思うけれど。
一体、彼の何から探したらいいのかも、わからない。
そもそも。
どこに住んでいたとか。
彼のテリトリーの地域とか。
学生なのか、社会人なのかすら、わからない。
そして、どうして私のうちに、現れたのかも。
いや、既にこんな状況なんだから、そのどれもが当てはまらないのかもしれないけれど。
彼がここから出られる方法を、考えてあげなければと思う。
ずっとこのままってわけにはいかないしね。
ソファに座り、小説の続きに視線を落とす仕草を見つめて。
私はひそかに両手を握りしめた。
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