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「姉上は心を病んでおられるのですか?」
淑子の問いに左大臣は何度も頷く。
しめしめ、まんまと食い付いたなとほくそ笑む。
弘子からの文を渡す。
それを読むと眉間に皺が刻み込まれる。
「お文を差し上げないと…。」
「そうだな、姉上も貴女の文なら心慰められるだろう。」
藤中将は扇を持っている方の腕をひろげバサッと膝にかかっていた袖を退かす。
「文で間接的にお慰めするよりも、直接お慰めしないか?」
「父上それは…出仕に…ということでしょうか?」
にんまりと口髭を上げながら深く笑った。
「そなたの外へ出てみたいという願いも叶えられる良策だと思うが…どうだ?」
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