左大臣家の三の君。

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困惑する。確かに外に出たい、長いこと会っていない弘子とも言葉を交わしたい。 しかし内裏となると気圧される。 幾人もの高貴な姫君らがひしめく内裏。 家の身分、御子、人望ありとあらゆるものが自信の盾にもなり自信を苦しめる矛ともなりうる内裏に出仕する。 返答に困る。 「…参内したい…ですが、その…」 「なに、そなたがずっと内裏に居ろとは申さぬ。たった1年ほどだ、出仕してみぬか?」 1年…1年であればなんとかなるかもしれない。 それだけで充分だ。 「わかりました。出仕します」 「ま、待て淑子!決断が早過ぎではないか!?」 慌てて藤中将が止める。 淑子はそんな兄に笑い掛ける。 決断が早過ぎる?そんなことはない。 屋敷が出られる絶好の機会だ。 今から胸が踊った。
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