左大臣家の三の君。

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御帳台に崩れるように倒れ込む。 此処のところ母のただならぬ勢いで内裏での手練手管、言葉遣い、等々詰め込まれ、体が疲弊しきっているのだ。 これも外に出るためと自ら言い聞かせ、鞭打って頑張って来た。 重たい単は5枚重ねているため肩も凝った。 ごろんと転がり仰向けになり手の甲を額にあてる。 「あー。」 「三の君様、お加減いかがですか?」 「…どうもこうもないわ…近頃の母上ときたら 日に焼かれるようだわ。」 「クスッ」 ムクッと起き上がり少納言を睨み付ける。 「何を笑っているの。」 不機嫌に言うと 「ふふ、北の方様は三の君様がお大事なのですよ。」 「…。わかってる。」 「ならおよろしゅうございます。」 そう、全ては淑子を思っての諸行なのだから、此方も答えねばならない。 「今日はもう休むわ」 「では、休まれませ…」 直ぐに意識は闇に引き摺り混まれた。
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