左大臣家の三の君。

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躑躅色、紅色、猩々緋、色鮮やかな赤、桃色が並ぶ。 そのさまにげんなりする。 藤壺女御は歌うようにそれらをなぞる。 入れ替わり立ち替わり袖を通すのでいい加減、腕がいたい。 「もう、勘弁してくださいませ…。」 畳の上にぐったり転ぶ淑子。 尚も着せにかかられる。 相模は曹司の端近で口許を覆って欠伸をしている。 少納言は藤壺女御と共謀して積極的に衣を薦めてくる。 「三の君様はお顔立ちが派手やかでいらっしゃいますから、この牡丹などいかがでしょう… 女御様。」 「私に聞かないの?」 「そうね!牡丹が良いわ!」 無視して話を進めていく。 「私は…」 「ではこれでいきましょう!」 「私の話を聞いてぇぇぇええ!」
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