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「そうか?」
「はい。」
ははっと乾いた笑いを噛み殺す藤中将。
この兄は淑子と良く似たあっけらかんとした性格をしている。
顔立ちも同じく母に似て綺麗だ。
藤中将は御簾からも零れるほどの多く送られている文の一つを拾う。
もうすぐ春なのでそれに合った季語が含まれた和歌が詠まれている。
「…気が進まぬか。」
「?はい?」
「何処かの殿上人と夫婦になることですよ。」
「はい…なんだかピンと来なくて。」
分からないのだ、誰かに恋をし、恋をされる自分の姿が。
兄や父以外の男と話してみても、女の友人話すのと変わらない。
「…私たちは似た者兄妹らしい。」
「兄上もですか?」
「うん、女子に話し掛けられることはあるのですが、なんというか…怖いんだ。後宮の女子というのは…」
「そう、だからお前たちの姉は只今苦しまれておられる。」
「父上!」
文を手にした父が話に横槍を入れた。
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