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お話?あらたまってなんだろうと思いながら、「いいよ」と、食卓の椅子に腰をかけた。
哲太ではなく、わたしに話すことといえば……。
それは、哲太への思いとか、そういうものしかない。
ついに来たかと思うと同時に、胸が少しだけ、痛むような気がした。
「ありがとうございます。失礼します」。
そう言って、彼も、同じように向かいに座る。
少しだけ、沈黙が続いた。
私はサイダーを飲みながら、彼の出方を待っていた。
そのとき、彼は少しだけうなづいて、口を開く。
「何から話そうか迷っていたんですが。
とりあえず、お姉さんの誤解を解きたいと思って。
ぼくは、あの、同性愛者じゃないし、別に哲太を、その、そういう意味で好きな訳ではないです」
ばっくん。
大きな心臓の鼓動とともに、冷や汗が流れだす。
なんと言ってもいいかわからず、「ふぁっ」という、変な声しか出なかった。
しんちゃんは少しだけ気まずそうな表情を浮かべて、サイダーを一口飲むと、話を続けた。
「実はぼく、お姉さんのマンガ、知ってます。
安村まいみさん、ですよね」そのしんちゃんの言葉を聞いて、ますます冷や汗が止まらなくなる。
そう、その名前は何を隠そう、わたしのペンネームだ。
「たまたま妹が持っていて、あの、お姉さんの描く絵は知っているので、似ているなぁって思ってめくってみたら、その……なんだか、哲太とぼくを、見てるみたいで」
あぁ、穴があったら入りたい!!
まさか、しんちゃんに知られていたとは。
パニックの極地すぎて、何かを喋ろうにも声にならなかった。
そんなわたしを見て、しんちゃんは、少しだけ慌てる。
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