Act.1  おとうとのともだち

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お話?あらたまってなんだろうと思いながら、「いいよ」と、食卓の椅子に腰をかけた。 哲太ではなく、わたしに話すことといえば……。 それは、哲太への思いとか、そういうものしかない。 ついに来たかと思うと同時に、胸が少しだけ、痛むような気がした。 「ありがとうございます。失礼します」。 そう言って、彼も、同じように向かいに座る。  少しだけ、沈黙が続いた。 私はサイダーを飲みながら、彼の出方を待っていた。 そのとき、彼は少しだけうなづいて、口を開く。 「何から話そうか迷っていたんですが。 とりあえず、お姉さんの誤解を解きたいと思って。 ぼくは、あの、同性愛者じゃないし、別に哲太を、その、そういう意味で好きな訳ではないです」 ばっくん。 大きな心臓の鼓動とともに、冷や汗が流れだす。 なんと言ってもいいかわからず、「ふぁっ」という、変な声しか出なかった。 しんちゃんは少しだけ気まずそうな表情を浮かべて、サイダーを一口飲むと、話を続けた。 「実はぼく、お姉さんのマンガ、知ってます。 安村まいみさん、ですよね」そのしんちゃんの言葉を聞いて、ますます冷や汗が止まらなくなる。 そう、その名前は何を隠そう、わたしのペンネームだ。 「たまたま妹が持っていて、あの、お姉さんの描く絵は知っているので、似ているなぁって思ってめくってみたら、その……なんだか、哲太とぼくを、見てるみたいで」 あぁ、穴があったら入りたい!!  まさか、しんちゃんに知られていたとは。  パニックの極地すぎて、何かを喋ろうにも声にならなかった。 そんなわたしを見て、しんちゃんは、少しだけ慌てる。
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