婚約者

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肩より長めの黒い髪。 まだ新しいブレザーの制服に袖を通しリボンを結ぶと、短めのスカートにシワがないかを確かめ、斜めに寄せた前髪を指で整える。 「よし、大丈夫」 莉真は最後に鏡で全身を確認し、スクールバックを手に部屋を出た。リビングに行くと、まだテレビを見ていた小学生の弟の頭に手を置く。 「和人、早く行かないと遅刻するよ」 「あ、やばっ」 ランドセルを慌てて背負う弟を横目にキッチンへ行くと、ラフな格好の父親が珈琲を飲みながら新聞を読んでいた。 「そっか、お父さん今日休みだったね。デートどこ行くの?」 「莉子に欲しい服があるみたいだから、ショッピングになるだろうな」  今でも『莉子』『和真』と下の名前で呼び合うほど仲の良い両親は、父の有給には母はパートを休み、2人でデートに出かける。  「いいなぁー。お母さん、私もTシャツ欲しい」 キッチンに立っていた母は、詰め終えた弁当を手に頷いた。
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