601人が本棚に入れています
本棚に追加
/119ページ
肩より長めの黒い髪。
まだ新しいブレザーの制服に袖を通しリボンを結ぶと、短めのスカートにシワがないかを確かめ、斜めに寄せた前髪を指で整える。
「よし、大丈夫」
莉真は最後に鏡で全身を確認し、スクールバックを手に部屋を出た。リビングに行くと、まだテレビを見ていた小学生の弟の頭に手を置く。
「和人、早く行かないと遅刻するよ」
「あ、やばっ」
ランドセルを慌てて背負う弟を横目にキッチンへ行くと、ラフな格好の父親が珈琲を飲みながら新聞を読んでいた。
「そっか、お父さん今日休みだったね。デートどこ行くの?」
「莉子に欲しい服があるみたいだから、ショッピングになるだろうな」
今でも『莉子』『和真』と下の名前で呼び合うほど仲の良い両親は、父の有給には母はパートを休み、2人でデートに出かける。
「いいなぁー。お母さん、私もTシャツ欲しい」
キッチンに立っていた母は、詰め終えた弁当を手に頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!