26人が本棚に入れています
本棚に追加
あぁ…ちっちゃい頃、好きなやつにいいところ見せようと頑張っちゃうことあるもんな。
「その子達が僕がピアノ弾けることを知らないって分かってたけど、僕も子供だから、ムカッとしちゃって………きらきら星の変奏曲を弾いたんだ」
「えっ!?きらきら星の変奏曲?あのこの前授業で聴いた きらきら星がだんだんレベルアップしてくやつ?すげー!」
あれが小学三年生で弾けるなんて、小林君は相当の上手さなのだろう。まぁピアノの上手い下手なんてよくわからないけど。
「ふ、何その覚え方…まぁ、そんなかんじなんだけど…。それを軽く途中まで弾いたら、周りの子がすごい褒めてくれたんだけどね、さっきまで弾いてた子泣いちゃって」
「うわぁ……」
確かに自分で挑発しといて凄いの弾かれたらキツイな…
「で、その子の泣き声で先生が来てなだめてくれたんだけど、次の日その子のお父さんとお母さんが学校まで来てさ。『うちの娘に恥をかかせたやつは誰だ!!』とか言って。怖いし恥ずかしいしクラス全員に酷い目で見られて。…学校に行けなくなっちゃった。」
「……酷いな…」
それでうちの学校に…
「転校してきてからは、誰とも関わらないように、ピアノが弾けることを気付かれないように、黙っていようって決めたんだ。」
「じゃあ、怪我したくないっていうのも、ぼーっとしてるのも…」
「怪我したらピアノが弾けなくなるでしょ。これはゴメン…僕のわがまま…。ぼーっとしてるのは、いつも頭の中で曲が流れているから。」
そうか。そうか…
これで全ての謎が解けた。
彼も彼なりに自分の感情を抑えて、誰も傷つかないように努力をしていたんだ…
ピアノだけが心の拠り所だったんだ…
最初のコメントを投稿しよう!