第1章

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「じゃあどうして今日は弾いたの?」 「……………先生に…頼まれたから…」 「先生?音楽の吉田先生?」 「ん………」 吉田先生は男の人で、まだ32歳ということもあり、女子から絶大な人気を得ていた。顔は全力でイケメン。でも、結婚はしていない。 「……………うっ、」 「えっ!?小林君、ど、どうした!?泣い、なっ、泣いてるの?」 「ううう………」 えっ、なんで!? 昔のこと思い出して辛くなったのか…? 小林君は斜めに背負っているバックの紐を握り締め、ゆっくりとしゃがみ込んでしまった。 「こば…、……!小林君、顔、真っ青…!」 「………気持ち悪い…」 「どっ、どうしよ、あの、うちで休んでく?すぐ近くなんだけど…あっ、用事あるんだっけ…そっ、そ、そんな場合じゃないよね…」 俺はおどおどしながら、おぼつかない足取りの彼の肩を抱きしめ、家へ向かった。
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