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卒業式が終わった後、小林君の席の周りはドッと人で溢れていた。
………ていうか、全員女の子なんですけど…。
俺は友達と一緒に帰りの支度をし始めた。でも、やっぱり小林君が気になりチラチラと盗み見てしまう。
「小林君ってピアノ弾けるんだね!」
「すっごいかっこよかったー!私、三年生より小林君のことずっと見てたよ!」
「わたしもー!すごかったもんねー!」
「きゃーっ、何言っちゃってるの!」
「………」
きゃーきゃー騒ぎまくる女の子たちに、少し圧倒されている小林君は、羨ましいけれど、なんだか少しいたたまれない。
クラスの男子が小林君を羨ましそうに見ているが、本人は女の子の壁で何も見えていないと思う。
「あの…僕もう帰るんで……」
「えーっ、もう少しお話ししようよぉ~」
「私もピアノ習ってるんだよ~!」
「あっ!わたしもー!でも小林君よりは全然…」
「……」
…完全にマークされたな。
これはしばらく解放されないだろう。
…………ん?
彼をじっと見ていると、どこか遠くを気にしているように見えた。
目線の先をたどると、教室の黒板の上の壁にかけてある時計。
…もしかして、ピアノのレッスン…とか?
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