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どれくらいの距離を走ったんだろう。
「はぁっ、はぁっ、はぁ…っ……」
足裏は擦り切れて血が滲んでいる。
身体はとっくに限界を迎え、止まれと言わんばかりに悲鳴を上げていた。
空は一面の黒。
夜だから太陽が出ていない。
まさに一寸先は闇で、前後左右もよく分からない。
街からかなり離れたんだ。
光が届かないのは当然だろう。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁっ……」
轟音と共に降り注ぐ雨が身体にぶつかる。
鳴り響く雷の音は耳に響いて、ただ恐怖を抱かせる。
疲れは限界を突破している。
一度でも足を止めれば、この草原に倒れ込むのは明白だ。
だから、足を止めてはいけない。
生きろ。
生きるんだ。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ───」
暗くて後ろはよく見えないが、きっとヤツらは追ってきているだろう。
捕まってはいけない。
そうすれば終わりだ。
こうして死に物狂いで得ようとしている自由も、無くなってしまう。
やっとチャンスが来たんだ。
これを逃すなんて出来ない。
たとえ俺が自由になる代わりに、世界中の人々が恐怖しながら生活することになっても構わない。
「ぁ………」
ガクリと、膝の力が抜けた。
やっとというべきか。
ここまで走れたコトに驚くべきだろう。
草原に倒れ込む。
……ああ。
腕も、足も、胸も。
今まで味わったことのないくらい全身が痛い。
泣きそうだ。
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