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目の前で何かが倒れる。
それでも何も感じられない。
「人形さん、…とどめは剣で」
可愛らしい顔をした私の人形が、手に持った武器を剣に変える。
そして襲いかかり…その倒れた『何か』はキラキラしたものを残して消えてしまった。
「……また違う」
キラキラしたそれが自分の中に吸い込まれないことを確認した私は、それをポシェットの中にしまった。
「行こう、…人形さん」
先ほどまで戦ってくれた人形は武装解除し、その場に生気を失くしたように座り込んだ。
私は人形を抱き上げる。
いつもと変わらず、冷たかった。
…私の名前はローナ・ミクソン。
姓はミクソンで、名はローナ。
お父さんがイギリス人だった。
ボサボサの金髪に、青い瞳。
この見た目で勘違いされることが多いけど、日本生まれ日本育ちな私は日本語しか話すことができない。
…覚えているのはそれだけだ。
あの神様が言っていたけれど、私ほど若い人が『アンダーワンダーランド』に来ることは珍しいんだそうだ。
だからなのかもしれない、…こんなに生前のことを知りたいのは。
なんで私は、10歳という年でここに来ることになったのか。
なんで私のアビリティは人形なのか。
神様に「友達がほしい」と言ったせいかもしれないけど、それだけじゃない気がするんだ。
……こんなに感情が乏しいのはきっと生前からなのだろう。
我ながら、かわいくない子供だと思う。
冷たい人形を温めるようにしっかり抱きしめて、私は歩き始めた。
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